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第20回 国際HPH(Health Promoting Hosptitalss)
参加者の報告

医局 舟越 光彦

医局 山本 一視

3年目研修医 花山 愛

リハセンター 理学療法士 伊藤 毅充

地域連携室 甲斐

第20回HPH国際カンファレンス台北 参加報告
医局 舟越 光彦
1、はじめに
 今回は、アジアでの初めての開催であり、千鳥橋病院からは6人の参加者を組織し、演題発表も2題準備し参加した。主な目的は(1)総会に参加し、HPHネットワークの課題と今後の目標を理解すること、(2)アジアのHPH参加施設やネットワークとの交流を一層広げること、(3)日本でHPHネットワークを作るうえでの課題を考えること、(4)当院の発表などを通して、当院のヘルスプロモーション活動の経験を海外に紹介することを目的に参加した。
2、参加の概要
4/10(火)福岡空港 
4/11(水)9:00から16:30:総会/18時から:HPHカンファレンス
4/12(木)HPHカンファレンス、Gala diner(懇親会)
4/13(金)HPHカンファレンス
4/14(土)Landseed病院と地域でのヘルスプロモーション活動の見学ツアー/帰国
 今回の日程で特徴的なのは、総会への参加とLandseed病院の見学である。総会は、役員とネットワークのコーディネーター(代表)とタスクフォース代表で構成され、HPHの議事を決定する最高決定機関である。慣例として、国・地域でネットワークを作ることができる条件を持つ国・地域に対しては、代表的な施設のコーディネーターがオブザーバーとして参加することになっているらしい。日本も4施設以上となっており、私が総会への参加の招待がされ参加することになった。
3、総会 GA meeting
 参加者は30名程度で、役員(トネソンさん、チョウさんなど)、タスクフォース代表とネットワーク代表だった。
 議題は、年次報告、決算報告、役員選挙、タスクフォース活動報告、カンファレンスの収支報告、予算と次期開催地の決定、タスクフォースの活動報告、ワークショップ(2011年から2013年の活動計画について3グループに分かれて)だった。867施設(2012年3月)。
 年次報告として、3カ年計画であるHPH global strategy2011-2013を実践するための年次計画Action Plan2011-2012の到達が報告された。計画は、課題ごとにアウトカムを決めPDCAサイクルで実践されていた。課題の到達が可視化され分かりやすく、洗練された運営がなされていた。
 決算報告に関しては、2011年の予算で20万ユーロ(2千万円)と報告があったが思いのほか少額だった。最近の欧州での経済危機が運営に大きく影響しているらしく、会費の滞納や脱退も少なくないようだ。このため、2015年からは現行の250ユーロから300ユーロへ年会費を増額することに決定したとのことだった。2012年、2013年の予算も提起されていたが、加盟施設を1000施設まで拡大することを前提にした予算だった。これに対して、収入の増加を見込まない実現可能な予算とするべきとの意見も出されていた。最終的には、new memberの多いアジアを中心とした新興国での加盟施設拡大、一方ではold memberの多い欧州では効果的で魅力的なヘルスプロモーションのツール開発などを通じて新規施設、ネットワークの拡大を図ることで意見がまとまった。
 タスクフォースとワーキンググループの活動では、新設の提案があり、「身体活動に関するタスクフォース」を「高齢者に優しいヘルスケアのワーキンググループ」の2つが提案され設立が確認された。ともに、各々の分野でHPHの理念に基づくヘルスプロモーション活動の枠組みを、各々のテーマに関して評価ツールを作成することが主な目的となる。ツールを提案することで、病院のマネジメントや患者評価、介入方法等の国際的な標準化を図り、そして、ヘルスプロモーション活動の水準を向上させようと意図されている。こうしたチームには、ネットワークのコーディネーターが希望するチームに参加することになっている。今後、こうしたHPHのツール作成に日本からも関わることができると面白い展開ができそうに思う。他には、現在進行中のタスクフォース(「子どもと青年」、「移民と困難な人たちに優しい」、「メンタルヘルス」、「アルコール」、「環境に優しい」、「喫煙」)から、ツールの作成状況等が報告された。「移民と困難な人たちに優しいタスクフォース」からは、「公正な医療の実践」を評価するためのツールの案が提案され、非常に興味深かった。
 今後の総会に関しては、2013年はスウェーデンのヨーテボリ(スウェーデン語ではゴーセンバーグ)は決定していたが、2014年の開催地について議論された。結論として、スペインのバルセロナとなった。なお、今後は、欧州2回、アジア1回でローテーションされるかもしれない。そうなると、2015年は、シンガポールとなる可能性が高かった。
4、国際カンファレンス
1日目
 世界医師会長の講演に感銘を受けた。世界医師会は、2011年の総会で医師がSDH(健康の社会的決定要因)の解決に取り組み、健康の不平等の解消に貢献することを求めた声明をだしている。会長の講演も同様の趣旨のものだった。その趣旨は、病気の原因には生活習慣などの目に見えやすい原因(proximate causes近位の原因)とそのさらに原因である健康の社会決定要因(causes of the causes 原因の原因)があること。健康の不平等が拡大し重要な健康問題となっている現在、医師は治療だけに限らず健康の社会決定要因に取り組まなければなければならないと訴えるものだった。国連、WHOがイニシアをとりながら、健康の社会決定要因に対する世界的な取り組みはムーブメントとなって広がっている。世界医師会の取り組みもこうした国際機関との協調した取り組みとして進められている。ただし、医師会の世界のトップの話は、改めて命の平等が保証される公正な社会の実現に社会環境の改善も不可欠であることを再確認させてくれた。この点、日本は医学会では健康と社会との関係についての関心は薄く世界の常識とは隔たりも大きく、いわばガラパゴス状態だ。当院も含めた粘り強い唱道(困難事例の報告、臨床研究によるエビデンスの報告など)が必要だと思う。
 一方、カンファレンスは3回目になるが、一貫してSDHに関する基調講演があり、HPHがSDHに強い関心を持っていることが感じられた。HPHの実践は、ヘルスプロモーションの理念を、リサーチをしてエビデンスを示すことで共感を広げ、ツールを開発してエビデンスに基づいた実践を世界規模で展開しようとしている。禁煙、飲酒、メンタル、労働衛生などの課題は、こうした作業手順で実践が進んでいる。しかし、SDHに関しては、まだまだ、HPHのネットワークの中でのエビデンスや実践の普及は十分とは言えない。先述の現在開発中の「公正な医療の実践」を評価するためのツール開発などなどを積み重ねて発展することが必要と感じた。

2日目
 「Relationship between Job Stress and Job Satisfaction among Medical Professionals」のタイトルでポスター発表を行った。ストレスでうつ状態が増加することは多くの研究報告があるが、ストレスと職務満足感の関連を医療職で検討した報告は少ない。今回の発表は、ストレスと職務満足感の関連を検討し、職務ストレスが少ないほど、職務満足感が高まることを示した。従って、ストレス対策は抑うつなどのメンタルヘルス対策あるとともに、職務満足感を高める効果もあることを報告した。会場では、台湾の看護師さんから質問を受け、台湾でも看護師のメンタルヘルスが問題であることと、同様の研究を実施していきたいというものだった。論文になったら知らせて欲しいということだったので、そうするように努力したいと思う。
 ワークショップ「公正な医療の実践を評価するための国際基準の作成」に参加した。会場の参加者は、40名程度だった。先述の「移民と困難な人たちに優しいタスクフォース」が開発中の「公正な医療の実践を評価するための国際基準」ツールの素案について、タスクフォースの責任者のChiarenzaさん(イタリア)から紹介を受けた。国際基準ツールは5つの基準、「1、公正な医療を実現するための病院の方針、2、公正な医療アクセスの実現、3、公正な医療の質の提供、4、公正な医療の実現のための患者や住民の参加の促進、5、公正な医療実現のための社会への発信」である。ツールの紹介の後に、3つのグループに分かれ、私は基準1についての討論グループに参加した。移民やマイノリティを対象に病院やNGOでヘルスプロモーション活動や研究をしている参加者で、議論もとても面白い内容だった。今後、ツールの開発にも参加できるようにしたいと感じた。

3日目
 口演セッションの「HPHのために必要な組織力を作る」に参加した。台湾のチョウ先生が、台湾の加盟病院がネットワークを作り発展した経験を報告。台湾は現在、世界で一番HPHの活動が盛んな地域だが、そこに至った組織的な経験の一端を知ることができた。台湾では、加盟前にHPHのセルフ・アセスメントを行い、ネットワーク事務局の訪問審査を受け加盟が承認される。アセスメントで不十分な項目は、訪問時に指摘され改善をすすめていくことになるが、ネットワークで開催されるトレーニングコースに参加したりや加盟病院の良好事例を学んでHPHとしてのパフォーマンスを向上させている。その結果、5年間経過してアセスメントの点数は全ての項目で有意に上昇し、ネットワークの機能が有効に働いていることが報告された。台湾の場合は、政府の関与が強く日本とは事情が異なるが、今後の日本での展開に非常に参考になる報告だった。
 最後の企画では、HPHの国際ネットワークが開始されて20年を振り返り、HPHの将来を語るものだった。特に印象に残ったのは、CEOのトネソンさんの話だった。HPHの将来には2つのシナリオがあること。1つは、ヘルスプロモーションが普及し、HPHの活動が不要になる望ましい将来が来ること。もう一つは、HPHのネットワークを広げる努力を続け、病院に関わる全ての人たちの健康の増進のために貢献をしていくこと。当然、答えは後者で、HPHのネットワークを広げる鍵は、あらゆる組織、人たちとのコラボレーションを一層広げることというものでした。ワールドクラスの知性に深く感銘を受けた。
 また、台湾のチョウ先生は、アジアのHPHのリーダーだが、ヘルスプロモーションを提供する病院(Health promotion in Hospital)とHPHとは別物だという話が印象深かった。組織の構造や文化をヘルスプロモーションを実践するのに相応しいものに変化した病院と保健予防活動を実践する普通の病院では、実践の効果も異なるということなのかと思った。民医連は昔から保健予防活動を実践しており、いまさら加入の意義を感じないという意見もあるが、これに対する答えがチョウ先生の話にあるのだろうと感じた。
5、Landseed病院と地域でのヘルスプロモーション活動の見学
 Landseed病院は、HPHの加盟の700床規模の病院で台湾のネットワークから表彰を受けているヘルスプロモーション活動の盛んな病院である。地域での健診活動は、行政と協力し毎週1000名の公的な無料住民健診を実施しており、その活動を見学させていただいた。健診の会場は中学校で、スタッフもボランティアで参加し活気のある雰囲気の健診だった。内容も、診察、採血、各種癌検診、うつ病スクリーニング、栄養指導、眼科診察、子供対象の健康教室など盛りだくさんの内容だった。健診だけでなく、健康教育の場としても運営されているのに感心した。昭和のころの民医連なら同じようなことができただろうが、今の時代では、ここまで職員を動員して毎週院外の健診をすることはできないだろうと感じた。政府からの政策誘導があるにしても、ヘルスプロモーションに対する強い情熱や使命感を感じた。病院見学では、豪華な病室も案内され当院との違いも感じた。一方で、院内の施設を利用したウォーキングマップの啓示は参考になった。
 昼食をしながらの会話で、台湾のHPHが盛んなのは政府の医療費削減を目的とした政策によるものであること、HPHの加入が日本の医療機能評価のような第三者評価の審査項目となっておりHPH加入でポイントが上がるように政策誘導されていることを聞くことができた。官製のトップダウン方式で広がっているわけだが、見学してみて病院のスタッフがヘルスプロモーション活動に情熱を持って取り組んでいることも実感できた。今後も、ぜひ交流を続けていきたいと感じた。
6、感想と今後の課題
 参加するにあたって、当初掲げた目標は実現できたと思う。総会では、HPHネットワークの課題と今後の目標を知ることができた。アジアのHPH参加施設やネットワークとの交流も、台湾、韓国の施設を中心に知り合いをさらに広げることができた。日本でHPHネットワーク作りに関しては、民医連以外の施設も加えて、多様な施設でネットワークを作らなければならないと再確認できた。そのためにも、現在翻訳中のHPHパンフレットを早急に出版しようと思う。当院のヘルスプロモーション活動の経験も3回続けて行ってきたので、認知度も高まってきたように思う。何よりも、全日本から多数の施設のスタッフがHPHの活動に直に触れ、その魅力を体験してもらったことが国内でHPHの活動を広げるには大きな力になることだと思う。
 今年度中には、日本でのネットワーク作りを展望し、当院の活動を質を高め、民医連以外の施設の参加を実現し、必要なHPHの文書の翻訳作業を進めていきたいと思う。
 最後になりますが、出張中に病棟の対応などをしていただいた医局員の皆さんを始め全職員の皆さんに感謝いたします。
 
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