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第20回 国際HPH(Health Promoting Hosptitalss)
参加者の報告

医局 舟越 光彦

医局 山本 一視

3年目研修医 花山 愛

リハセンター 理学療法士 伊藤 毅充

地域連携室 甲斐

第20回HPH国際カンファレンス台北 参加報告
2012年4月17日 医局 山本 一視
〇サマースクール報告
 4月9日〜10日のHPHサマースクールおよび4月11日〜13日の国際カンファレンス、そして14日のsite-visitコースに参加した。サマースクールについて以下報告する。
 最初の2日間のサマースクールはHPHのとりくみを深く理解し推進者を養成すべく行われたもので、終了時にはHPH本部からattendantとしてのcertificationが与えられた。内容は以下の3つのテーマでレクチャーとワークショップ(以下WS)が繰り返されるというものであった。グループは近くに座っている人たちで形成するということで当院からの参加者の3人(私、園田、花山)と悲運にも私たちの後ろに座っていたIndonesiaの2人(Social Healthの専門職の女性ティカさん(22歳)さんと、National instituteの機関に所属していて大学では非常勤のresearcherをしている女性タティさん(28歳))によるグループが形成された。もちろん彼女たちはnativeに近いほど英語が堪能で、またお国を代表してくるだけあって頭脳明晰、ディスカッションの進め方もまとめ方も非常に優れた娘さんたちであった。この日は一日中、彼女たちの「寛容と優しさ」と「能力」と「明るさ、positiveさ」に助けられ続けることになる。最初の全体での自己紹介でみなさんがとても流暢に話されるのでもう帰りたいと思ったが、そのままタイムテーブル通りに進行する。初日午前中の(1)「HPHのimplementationをどうすすめていくのか」ではレクチャーの後でQ1;自分の地域や病院でHP(Health Promotion)のために必要なことは何か、Q2;ではそのためにまず何を実践しなければならないか、という2回のWSを行った。当院で経験するアルコール症、貧困、社会的孤立の状況とインドネシアでの高い喫煙率(たばこ産業の圧力、医師の高率な喫煙なども)が交流されながらなんとか発表もクリア。午後からは(2)「(Health promotionのexpertを養成するためのMasterコースの紹介とあわせて)診療の現場で(対患者の場面で)患者の行動変容をどうすすめていくのか」。Q1;どのようなテーマがHPに関するexpert側の学習に必要か、というWSのあと、患者の行動変容についてrole playが行われた。こちら3人の会話能力からみて、ティカさんに医師をやってもらい私が言葉のよくわからない外国人労働者(名案!)を演じるというのが最もnaturalだと思ったが、結局私が医師役、ティカさんが2回目の股関節の手術を控えたアルコール常用女性を演じた。もともとこのセッションでは術前の4か月断酒が膝と股関節の術後合併症を半減させるというEvidence(Lancet)や術前の禁煙が腹部手術の術後合併症をこれも大きく減らすというEvidence()に基づいて(そういう習慣の変更で周術期の成績が著しくよくなるというdataがいろいろすでにMajorな雑誌でpublishされていることを知らなかったのでそのこと自体が新鮮な驚きであった)行われ、またそのHPを進めていくための手段として)Clinical balance )stage of patient )Motivational interviewの3つのステップとそれぞれに使われるツールが提供された。ここで使われたテキストが現時点でのこの分野での到達ということであったので、今後日本語に翻訳しながらみんなで学習していければと思った。Role-play自体はティカさんが女優顔負け(たぶん泉ピン子の若いときよりもうまい)の熱演で盛り上がり、朝から英語を使ってきたことで頭痛と思考停滞がひどくなった私が医師役にもかかわらず患者さんとのやり取りの途中で休憩動議を提出するという暴挙にでて彼女たちの爆笑を買って非常に楽しく終えることができ、それぞれの役回りからのコメント発表もそれなりに終了した。へとへとになった私たち3人にもやっぱりほかの全然ストレスのない参加者たちと平等に憎らしい朝は訪れ2日目は(3)「自分の地域で、都市で、国でHPHのNetworkを形成していくにはどうすればいいのか」というテーマ。今回の大会長を務めた台湾のDr. Shou T Chiou(台湾に77病院のHPHを組織し台湾の国民健康局長に就任した女性医師)が素敵な笑顔とバイタリティと情熱があふれるレクチャーで私たちを「熱く」していく。レクチャー後にフロアからの質問が相次いで全体でのディスカッションが長くなり予定されていたWSは中止。喜んだのもつかの間、国ごとにこのレクチャーから何を学んで何を持ってかえるのか発表することになり、もはや他国の善意にすがる手段もなくなった私たちはHPHを国内で地域でmake-diffusionするために行動することを誓うのであった。こうして私たちのterribleな2日間は終了。苦しみながらも考えたことを私が話すのを優しい笑顔でうなずきながら"Thank you"と言ってくれるDirectorのHanne Tooneson先生が本当に素敵だった。
 学んだのはHPHの方向性はどんな国でもどんな立場からも歓迎される、そういうニーズが高まっている時代なのだということ、そしてそのimplementationにはそういう意識を持って「行動する人」が必要だということ、Health promotionは外来でも病棟でも何科でも、地域でも都市でも国でもどんなレベル分野でもそれを進めることがそこにいる人たちの幸せにつながるのだということ。世界には知的で良識ある素晴らしいリーダーがいて、また情熱と能力をもった若者がたくさんいるのだということ。そしてそこでのディスカッションや取り組みのhuman resourceになるには英語での会話(可能なら日常生活より少しだけ難しい会話までも)を勉強しなければならないのだということを感じた。
〇国際カンファレンスに参加して
 2日間のサマースクールに引き続き4月12~14日の国際カンファレンスに参加した。
 2年前の健康格差にタックルする、1年前のヘルスプロモーションの連携、というテーマからの連続性をどうとらえればいいのかわからなかったが、全体的には健康格差という問題はジェンダーや移民の問題として取り上げられていたけれども、どちらかというとaging populationという問題にどうとりくむのか、HPHを個々の病院レベル→regional→nationalと実践していくにはどうするのか、という問題意識が前面にでていたように感じた。これは、主催の台湾がこれまですすめてきたこと、いま直面して実践していることが反映されているように思えた。また初めて欧州を離れてアジアで開催されたという運動の広がりもあって、Health promotion(HP)を世界で進めていくにあたって、HPHネットワークが既存のさまざまな学術団体、保健健康推進団体や環境保護関係団体と連携を深めていこうという議論がされ、plenary講演も幅広い分野からゲストを招いて最新の状況、課題が報告されていた。『コラボレーション』という言葉が、HPHの指導者たちから繰りかえし語られた。
 そういう中でもっとも印象深かったのは世界医師連盟の会長GOMES DO AMARAL氏の講演で、Social Determinant of Health(SDH)を真正面からとりあげ、「貧困や環境や労働など社会の問題に取り組まなければそこの人たちの健康はえられない、そのためには医師も病院も何をするのかを考え行動しなければならない」と世界の実例を出しながら熱く語っていた。まるで民医連の講演を聞いているようで、正直驚いてしまった。しかし世界医師連盟はすでにSDHの議論と問題提起を数年前に行っているのであった。医療や健康というものたちと経済、労働や環境や文化といった人間社会全体との切り離すことができない本質的な構造をあらためて意識することができた。一方でUSAのAHAの幹部LARBRESH Ken氏がUSAでの心臓死を100万人減らすキャンペーン(Million Hearts Campaign)について講演し、その提案の仕方のスマートさに感心し、一次予防に政府機関と学会を挙げてとりくむという方針が良いなと思ったが、実現への方略として「(禁煙も含めた)ガイドラインをしっかり作ること」と「たばこ税を上げること」の二つで解決できるというような発想が、なんともハリウッド映画的で単純だなとおもった。HPHのDirectorのDr. TǾNNESONがその発言を受けて「禁煙にせよ運動不足解消にせよ、行動変容を起こすこと、ヘルスプロモーションが、個人個人の状況に応じて進められることが重要(ガイドラインのその先が大切なのよ)」と発言をしていたが、私の大好きな「紅の豚」でジーナが言い寄ってくるアメリカ人のカーティスに「ここではあなたの国より少し複雑なのよ」といなすシーンを思い出してしまった。
 口演とポスターでは開催国の台湾での実践報告が大変多かったが、昨年から台湾が国レベルで取り組んでいるプロジェクトの「age-friendly hospital」という取り組みが、当院が直面している問題でもあり、今後関心を持っていきたいと思った。そのほかにもイタリアでの国を挙げての「No Pain DAY」のとりくみや、全体講演でだされたWHOのbaby-friendly hospital(「赤ちゃんにやさしい病院」日本でもとりくまれています)など興味深いものがたくさんあった。
 最終日のHPHのリーダーたちによるパネルディスカッションが圧巻で、これまでの20年を振り返りつつこれからのHPHの展開を語り合うのだが、短い時間できっちりエッセンスを共有していくその力量に感服した。個人にも病院にも地域にも都市にも国にもいたるところでHPが展開される未来をめざそうというメッセージがとても印象的だった。世界のリーダーたちの資質と人間性、知性を感じて感動した。
 いろんな分野の第一人者の話が聞けて、世界中が直面しているさまざまな問題の今を知ることができる、そしてそれがヘルスプロモーションへ収斂されていくという経験がわずか3日で(WSもおすすめです)経験できるこのカンファレンスは本当に刺激的であり、ぜひ毎年いろんな医師に参加してもらいたいと思った。
 今回私を送り出していただいた医局のみなさん、病院職員のみなさんに感謝します。
〇4/14病院見学ツアーに参加して
 最終日は朝から台湾HPHネットワークのモデル病院であるLandseed Hospitalを見学。700ベッドだが看護師不足で300ベッド。あたたかいもてなし、医療活動紹介からはじまり、印象としては当院近くのきれいなA病院に近いものを感じたが、地域に出ていくことも病院の基本骨格という位置づけがなされており、地域への健診、ネパールへの年2回の医療支援を継続しているという紹介であった。実際にそのあと中学校の施設を借りて毎週実施されている住民健診を見学。1000人ぐらいの住民参加で、問診、認知症スクリーニング、口腔癌のスクリーニング(bete nutsというものをかむ習慣があり高率発症とのこと)、PAP‐smear、胸写、視力測定+眼科医による診察眼底観察、骨密度測定、血液検査、マンモグラフィ、栄養相談、薬剤師相談とたくさんの内容が無料で受けられるシステムであった。職員が休日にもかかわらずたくさん参加していて、しかもいきいきしたみんなの表情が気持ちよかった。午後からは、医療ツーリズムにも対応していると思われる1日3万円の室料の一流ホテル並みのフロアから差額なしの4人部屋まで見学。院内に芸術ギャラリーがあったり、玄関近くのホールには小学生や中学生が書いた禁煙ポスターのコンクールが展示されていて、居心地をよくする工夫と地域を啓蒙するとりくみが印象に残った。
 院長によれば診療報酬はこの10年ほとんど据え置きでしかし人口の高齢化への対応など病院に必要な投資は増えていくばかり、大変なのだということであった。
 丁寧な歓迎に感動し、また高度の医療から住民健診、開発途上国への支援まで手広く実践するバイタリティに感心した。当院の今後のHPHとしての取り組みにもいろいろ刺激になる見学ツアーとなった。
 
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