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第22回 国際HPHカンファレンス 開催要項

■日程
2014年4月23日~4月25日
■開催地
スペイン・バルセロナ
■テーマ
病院と健康サービスの文化をより健康増進的なものに変える

概 要

報告:千鳥橋病院 総合内科 有馬泰治

HPHサマースクールから中司貴大医師・竹内宏樹医師が参加、国際カンファレンスから有馬泰治医師が参加。同法人のたたらリハビリテーション病院からはPT有吉セラピストとOT塩貝セラピストが参加。日本からの参加としては総勢31名の参加。全日本民医連の参加者から組合員さんが5名参加しているのが特徴的でした。日本側からの発表はオーラルセッション1、ミニオーラルセッション2、ポスター発表23でした。

大会テーマ
「病院と健康サービスの文化をより健康増進的なものに変える」
サブテーマ
「ヘルスリテラシー:より患者中心のヘルスケアの新しい概念」
「医療従事者のための健康的な環境づくり。医療スタッフによる医療スタッフのための、より健康増進的な文化の発展」
「組織やセッティング(場)の共同の文化を通して地域のニーズによりよく答える」

開会式

現在の国際HPH事務局長のシュウ・チ・チョウ先生(台湾)からの挨拶。「全体での参加者は約740人であり51%がアジアからの参加。582のポスターセッション、32のオーラルプレゼンテーション、ミニオーラルプレゼンテーションが14ある。世界中からヘルスケアの専門家が集まる学会であり、誰よりも健康について理解している。人々を助け、病院の文化を変えるために、政策決定者を支えてほしい。」とのこと。
カタルーニャ(バルセロナを中心とするスペインの地域)のHPH地域ネットワークは2008年に結成されたばかりであり、スペインの経済危機にも関わらず、患者中心の医療・予防・コミュニティーケアに力をいれ、カタルーニャのヘルスケアシステムを構築されていました。

全体集会1|カンファレンスの序説

組織の文化と病院のケアの質
オリバー先生(ロンドン公衆衛生大学ヘルスサービス研究者)

「効率的で安全な患者中心のケアの提供を阻む因子として組織の「文化」が近年強調されている。組織の文化をより開かれた、わかりやすく、誠実なものにしなければならない。しかしながら実際に組織の文化を変えるには時間がかかり、管理者から最前線の労働者まで仕事の中身と同時に意識を変えないといけない」。演者はヨーロッパの病院における効率的な質の改善ついての多施設研究を行っていました(DUQuE)。
「組織の文化を評価する取り組みは数多くなされているが何を評価するか自体も難しい。組織の文化を変える取り組みはなされているがまだ十分なエビデンスはなく、組織の文化を変える魔法の杖はない。地域の背景的因子によることが多い。今後のHPHの取り組みが注目されている。」とのことでした。

カタルーニャ健康政策におけるヘルスプロモーションの役割
Carmen(カタルーニャ州公衆衛生局ヘルスプロモーション局次長)

政府を巻きこんだ健康増進の計画(PINSAP)についての説明。カタルーニャは日本についで世界二位の長寿を誇っている。しかし高齢化や不平等や移民の問題などあり。食事・運動・慢性疾患管理などさまざまな指標を設けている。またSDHの政策ももっておりそれを学校・大学なども含んださまざまな施設間で取り組んでいるとのことでした。研究だけではなく、幅広い実践を行い、データをだしているそうです。

全体集会2|ヘルス・リテラシー

より患者中心のヘルスケアの新しい概念
リマ・ルッド博士(ハーバード大学公衆衛生学院)

ヘルスリテラシーは「個人が個人の健康を向上し維持するために、医療情報にアクセスし理解しそれを活用する能力」から「医療従事者や医療サービスが、健康のために行う社会的・政治的・個人的な行動を援助し積極的に勇気づける能力へ」と変化しているとのことでした。
ヘルスリテラシーについての研究はすでに多く存在しており、どう行動に起こすかが課題であることが最初に強調されていました。
患者をエンパワメントするメカニズムと戦略を、(1)情報へのアクセスを増やすこと、(2)ナビゲーション、(3)決定過程の共有の3つに分けて説明がありました。「情報の入手のためには紙・ネット・メール、対面などの活用など様々ある。そしてそれに対しての評価し修正を行うことが大切。様々な情報が氾濫している中、医療従事者がそれを整理していく必要がある。ナビゲーションについては案内業務の整理とともにスタッフの教育が必要。そもそもの病院の役割を見直す必要がある。」とのこと。決定過程の共有のためには対話が強調されました。

ロサ(スペイン ヘルスリテラシー作業グループ)

「ヘルスリテラシーの低さの原因として、貧困の問題・女性の問題・移民の問題がある。スペインでは特定の病気に関する情報についての宣伝物が用意されている。」とのことでした。

クルーゲ博士(WHOヨーロッパ)

健康2020などの健康政策を策定し、手指衛生の取り組みなどがされていることなどWHOヨーロッパの状況と取り組みが報告されました。インターネットを利用した健康教育などの報告もありました。

全体集会3|医療従事者のための健康的な環境づくり。医療スタッフによる医療スタッフのための、より健康増進的な文化の発展

ゲオルグ・バウエル(スイス)

労働環境が病気の原因になることもあり健康増進になることもあるという2つの側面。デマンドーリソースモデルについての説明。デマンド(要求)とは不明確な役割、締め切りのプレッシャー、多すぎる仕事量などでありリソース(資材)としては上司のサポート、同僚のサポート、自己裁量権、やりがいのある仕事など。労働環境の改善のために組織は労働者の労働条件を定期的に評価する必要があり、次に作業チームにフィードバックしなくてはいけないとのことでした。最後に、リーダーとチームが戦略的に健康増進のための能力を向上させないといけない。リソースの高い職場は安定して健康な職場を維持することができるということが述べられていました。

コンソル・セーリャ(スペイン ヘルスプロモーション作業委員会)

「仕事をしていることで寿命が延びるというエビデンスがある。人々が働き続けられる環境づくりが大切。労働環境を改善することが健康的な生活様式を作り出すことになる。そのためには組織の文化づくりが大切。職場での教育・訓練プログラムは推奨されており、労働者の行動に変化を来してはいるが、けがや症状の減少などの健康への影響はまだ明らかになっていない。また、どのような訓練方法がいいかもまだ質の高い研究が存在していない。」

全体集会4|組織やセッティング(場)の共同の文化を通して地域のニーズによりよく答える

ケビン・J・チェン(台湾 台北市政府衛生局次長)

台北市では市民に台北カードを配布しており、台北市民の1割が所持しているとのこと。
台北カードには医療情報・介護情報・健康情報などが入っており、電子財布としても利用できるとのこと。市の自転車を利用すると利用時間や移動区間が記録されたり、街角にあるHATM(健康ATM)では血圧や脈拍などのデータがその都度記録でき、市が中心となって市民の健康を管理しているとの報告でした。

ハビエル・ガリエゴ (スぺイン 公衆衛生局長)

アラゴン州での高校を巻き込んだ健康増進の話。高校の教育理念の中に、健康の方針を入れることが大切とのことでした。自己評価を高める、生活スキル、社会サポートの学習など。教師を巻き込んだ取り組みとなっていました。

クリスティアーネ・ストック(デンマーク大学ヘルスプロモーション研究所)

大学とのヘルスプロモーションのコラボレーション。大学は高度教育が基本理念であるが、実際には病院と状況や理念がかぶっていることも多い。多くの構成員を要しており、将来社会に影響を与えていく人々を育てており、ここでの健康増進の取り組みが重要であることが説明されました。

全体会議5

ホルヘ・フェルナンデス(スペイン)

オンラインケアや携帯アプリなどの報告があった。インターネット上で見ることができたり、SNSなどを通して情報を共有できるだけではなく、参加型のアプリについての説明がありました。

千鳥橋病院ポスター発表

Study of the Smoking Status of Preoperative Patients in Chidoribashi General Hospital.
T.Nakashi, Y. Arima, M. Funakoshi, K. Yamamoto|Chidoribashi General Hospital, Japan

閉会式

2015年は6月10日~12日で、ノルウェーのオスロで開催予定です。
2015年HPH国際カンファランスのテーマ「急速に変化する世界の中で、個人中心の健康増進~エンパワメント・継続性・複合的システム・新技術」