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韓国・グリーン病院と姉妹提携

ちどり通信2023秋号より

グリーン病院との姉妹病院提携を祝う  千鳥橋病院院長 山本一視

グリーン病院のルーツは韓国のレーヨン工場での二硫化炭素中毒の労働災害へのたたかいにあります。
その工場の機械は日本の東洋レーヨン(今の東レ)から1965年に韓国の興韓化学繊維(のちの源進レーヨン)に渡ったもので、すでに日本で労働者に二硫化炭素による過酷な症状が生じていたことを韓国の労働者には伏せられたまま、労働災害の「輸出」が行われたのです。奇しくも日本における二硫化炭素中毒の労働災害は1960年代に八代で始まっており、そのことを突き止めて闘ったのが熊本民医連でした。その後京都の宇治のユニチカでおきた同じ二硫化炭素中毒には京都民医連が労働者と一緒にたたかい、法廷を含めた長い闘争の末、労災認定をかちとりました。

源進レーヨンの労働災害が社会問題となり、その闘争の結果、解決のために創設された源進職業病管理財団(非営利公益法人)の病院部門がグリーン病院の始まりです。グリーン病院として今の場所に建設されたのが2003年。中途、経営危機で存続が危ぶまれた時期を全職員の力と日本の有志を含む多くの人たちの協力で乗り越え、いま、労働、人権、地域、環境の4つを医療活動の軸に据えて、ぶれずに明るく力強く前進しています。

 そのグリーン病院から千鳥橋病院が姉妹病院提携の打診を受けたのが2019年でした。同年イム・サンヒョク院長をはじめ代表団が当院を訪問されました。次は当院からの代表を送って提携を結びましょうと予定していたところにCOVID-19のパンデミックで訪問延期となりました。2020年パンデミックの最初の時期、ガウンもマスクも枯渇してどうにも行き詰った時に、グリーン病院から大量のガウンが届きました。愛、友情、連帯・・・なんと表現するのがふさわしいかわからないその温かい心配りと迅速な行動に涙が込み上げました。

 

 2023年4月、念願であった同院への訪問を当院の役職者6名でおこない、無事に提携の手続きを執り行うことができました。見学したどの部署の職員も誇らしげに病院を語る姿が印象的で、設立20年と若々しい、しかし倒産の危機を乗り越えた力強さ、明るさを持った病院でした。ひるがえって、当法人福岡医療団のルーツは、筑豊で酷使され使い捨てられた炭鉱労働者の極度の貧困と健康破壊への救済支援活動にあり、また千鳥橋病院の立地は、在日コリアンの方々が差別に苦しみ、社会経済的にも苦労しながら暮らしてきた地域でもあります。ハングル文字を背景に出張診療する佐々木秀隆先生の写真を見たことがある職員もすくなくないでしょう。ここで暮らすたくさんの方々が当院での診療を受け、またたくさんの方々が当院を物心両面で支えてくださいました。当院にとっても、グリーン病院との姉妹病院提携は自らのルーツにもかかわる意義深いものです。今後、民間レベル、医療介護レベルでの日韓交流を大いに行い、専門職の交換研修など計画したいと考えています。